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「製作費3,000万ドルで買い叩かれた50年のレガシー。全世界200億円の興行収入が暴いたインディーズ監督の限界」
**製作費3,000万ドル(約45億円)を投じ、全世界興行収入1億3,629万ドル(約200億円)を記録した2023年公開の映画『エクソシスト 信じる者』(原題:The Exorcist: Believer)。**数字だけを見れば堅実なヒットに見えるかもしれませんが、ユニバーサル・ピクチャーズがこの新3部作の全世界配給権を獲得するために、モーガン・クリークからなんと4億ドル(約600億円)という天文学的な巨額で権利を買い取った背景を知っていれば、ハリウッドのプロデューサー陣がいま冷や汗を流していることは想像に難くありません。
メガホンを取ったのは、スラッシャー映画の金字塔『ハロウィン』を復活させ、見事なまでに失速させた3部作(2018〜2022)でお馴染みのデヴィッド・ゴードン・グリーン。かつて『ジョージ・ワシントン』(2000)などの繊細なインディーズ映画で映画批評家たちを唸らせた天才が、なぜかブラムハウスのジェイソン・ブラムと手を組み、ホラー史に輝く聖域へと土足で踏み込みました。本作は、映画史を塗り替えた1973年のオリジナル版第1作『エクソシスト』の正統な直接の続編として作られています。
生前、オリジナル版の監督であるウィリアム・フリードキンが「あいつが俺の『エクソシスト』の続編を作るくらいなら、俺は霊魂になって彼に憑依し、人生を地獄にしてやる」とシニカルに言い残し、奇しくも映画公開の2ヶ月前にこの世を去ったという呪われた逸話付きの本作。果たしてこれは、50年の時を経て悪魔パズズ(あるいはその一族)との戦いを描く正統なマスターピースか、それとも海外掲示板で炎上した通りの「B級悪魔憑き映画の詰め合わせ」なのか。長年ハリウッドの酸いも甘いも取材してきた筆者が、その化けの皮を剥いでいきましょう。
- おすすめ度: ★★☆☆☆(2.0/5.0)※特殊メイクと音響、そして子役の体当たりな演技は一級品ですが、脚本の支離滅裂さとレガシーキャラクターの扱いに耐えられる熱狂的ファンは少ないでしょう。
- こんな人におすすめ: オリジナル版へのこだわりが全くなく、『死霊館』シリーズのような、特殊効果多めでジャンプスケア(ビックリ演出)満載の現代風モダン・ possession 映画として割り切って楽しめる人。
1. 作品情報とIMDbスコア(世界基準の客観評価)
IMDbスコアは4.8/10(約5万票)、批評家の通信簿であるMetascoreは39という、名門フランチャイズとしては惨憺たる評価を下されています。Redditなどの海外フォーラムでは、「『ヴァチカンのエクソシスト』の方がよっぽど楽しめた」「オリジナル版が持つキリスト教的な実存主義の恐怖が、薄っぺらいマルチカルチャーな説教に成り下がった」と、ホラーコミュニティから猛烈なバッシングを浴びています。
| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 邦題 / 原題 | エクソシスト 信じる者 / The Exorcist: Believer |
| カテゴリー | 長編映画(アメリカ合衆国) |
| ジャンル | オカルト・ホラー / サイコスリラー / サスペンス |
| IMDbスコア | 4.8 / 10 (DGG監督の『ハロウィン・エンズ』に続く大失速と酷評) |
| 製作費 / 興行収入 | 約3,000万ドル / 全世界 約1億3,629万ドル |
| 監督 / 脚本 | デヴィッド・ゴードン・グリーン / ピーター・サトラー、デヴィッド・ゴードン・グリーン |
| 公開年 / 上映時間 | 2023年10月 / 111分(R指定:ショッキングな映像、卑猥な表現) |
主要キャスト・登場人物と本作における役割
オスカー俳優陣やトニー賞受賞者を贅沢に配置したアンサンブルですが、キャラクターの掘り下げが浅く、単なる「お説教の道具」として消費されているのが惜しまれます。
| キャラクター | キャスト (Cast) | 役柄・物語のテーマにおいて果たす役割(深掘り) |
|---|---|---|
| ヴィクター・フィールディング (Victor Fielding) | レスリー・オドム・Jr (Leslie Odom Jr.) | 写真家。13年前のハイチ大地震で臨月の妻を亡くし、生き残った娘アンゲラを男手一つで過保護に育ててきた。妻が死んだトラウマから神や信仰を完全に捨て去っており、娘に起きた怪異に対しても科学的アプローチで拒絶しようとする。物語の根底にある「信仰の揺らぎ」を体現する、本作の実質的な主人公。 |
| アンゲラ・フィールディング (Angela Fielding) | リディア・ジュエット (Lidya Jewett) | ヴィクターの娘。一度も会ったことのない亡き母の霊と交信したいという無垢な願望から、友人を誘って森の中で降霊術の真似事をしてしまう。結果として悪魔に肉体を乗っ取られ、黒い液体を吐き散らし、不気味な声で大人たちを精神的に蹂躙する、現代版リーガン役を熱演。 |
| キャサリン (Katherine) | オリヴィア・オニール (Olivia O’Neill) | アンゲラの同級生で、厳格なキリスト教(バプテスト派)の家庭で育った少女。アンゲラと共に森で失踪し、同時に悪魔を宿して帰還する。今作の最大の特徴である「2人同時憑依」の片割れ。彼女の家庭の狂信的な信仰心が、悪魔の格好の餌食となる。 |
| クリス・マクニール (Chris MacNeil) | エレン・バースティン (Ellen Burstyn) | 50年前、悪魔パズズに憑依された娘リーガンの母親。娘を救った経験をもとにオカルトや各国の儀式を研究し、著書を出版したことで娘とは絶縁状態にある。ヴィクターに乞われてアドバイザーとして参戦するが、名作のヒロインの復活劇としてはあまりにも冷酷かつ悲惨な「肉体的制裁」を受けるため、旧作ファンの怒りを買った元凶。 |
| アン (Ann) | アン・ダウド (Ann Dowd) | フィールディング家の隣人で、病院の看護師。実は過去にカトリックの「修道女(シスター)」を目指していたが、ある個人的かつ宗教的な挫折からその道を諦めた背景を持つ。悪魔がその過去を暴き、彼女の罪悪感を突くことで、彼女自身が再び信仰の十字架を背負うことになる重要な狂言回し。 |
2. 『エクソシスト 信じる者』あらすじ(ネタバレなし)
「森から戻ってきたのは、娘たちの形をした『何か』だった」
妻を亡くした悲しみを抱えながら、愛娘アンゲラ(リディア・ジュエット)を一人で育ててきたヴィクター(レスリー・オドム・Jr)。ある日の放課後、アンゲラは同級生のキャサリン(オリヴィア・オニール)と共に、「亡くなった母親の声が聞きたい」という軽い気持ちで、不気味な近所の森の奥深くへと足を踏み入れてしまいます。そのまま2人は消息を絶ち、警察や地域住民を巻き込んだ大規模な捜査が始まりますが、何の手がかりも見つからないまま3日が経過しました。
4日目、家から30マイルも離れた田舎の牧舎で、2人は無傷で発見されます。衣服は汚れ、ひどく混乱しているものの、本人たちには「数時間だけ森にいた」という記憶しかありませんでした。一安心したヴィクターでしたが、我が家に帰ってきた娘の様子は、明らかに一線を越えていました。
突然意識を失って暴れ出し、過呼吸を繰り返し、常人離れした力で壁を引っ掻くアンゲラ。同時に、敬虔なクリスチャンの家庭に戻ったキャサリンも、教会の日曜礼拝の最中に乱入し、血を吐きながら下品な罵詈雑言を叫ぶという異常行動を起こします。近代医学では説明のつかない「2人同時の精神崩壊」に絶望するヴィクターは、隣人の元修道女アンの勧めで、かつて同じ地獄を生き延び、悪魔の possession (憑依)に関する本を出版していた老女クリス・マクニール(エレン・バースティン)の元を訪ねる決意を固めます。しかし、それは50年間潜伏していた邪悪な悪魔が、大人たちの「信仰」と「親の愛」を試し、嘲笑うために仕掛けた残酷なゲームの始まりに過ぎなかったのです。
3. 海外の評判・レビューと「賛否が分かれる理由」
批評家からは一斉にブーイングを浴びた本作ですが、ホラー映画としての「ガワ(外見)」の部分を評価する声もわずかながら存在します。
👍 評価される点:子役たちの凄まじい身のこなしと、おぞましい音響効果
- Linda Blairの影に負けない肉体演技:
悪魔に憑依されたリディア・ジュエットとオリヴィア・オニールの2人の少女の演技は、間違いなく本作のハイライトです。ベッドの上で関節を不自然に曲げ、首を狂気的に振り、邪悪な笑みを浮かべる姿は、CGIによる過剰な補正を排した素晴らしい「フィジカル・ホラー」として海外レビューでも絶賛されています。 - 重低音の恐怖と『Tubular Bells』:
劇場(特にIMAX)での鑑賞時に、悪魔の喉から発せられる複数の子供の声が混ざり合った不気味なダブリングボイス、そして終盤にアレンジされて流れるあのマイク・オールドフィールドの伝説的テーマ曲『Tubular Bells』の重厚な音響は、観客の背筋を凍らせるのに十分な威力を発揮しています。
👎 批判・注意点:なぜカトリック教会をクビにした?「アベンジャーズ化」した合同祈祷
- 宗教の「ちゃんこ鍋」状態:
『エクソシスト』の真の恐怖は、厳格なカトリック教会が持つ保守的な儀式と、それに挑む神父の個人的な信仰の崩壊にありました。しかし本作では、カトリック教会が早々に神父の介入を禁止。結果として、主人公たちはカトリック、バプテスト派、ペンテコステ派、果てはハイチのブードゥー教のシャーマン(!)までを部屋に集め、「みんなで心を一つにして悪魔を倒そう!」という、まるでマーベル映画のような『合同宗教アベンジャーズ』を結成します。これが「カルト宗教のサマーキャンプのようで、全く怖くない」と大炎上しました。 - クリス・マクニールの不条理すぎる「扱い」:
50年ぶりに復帰したレジェンド、エレン・バースティンですが、悪魔と対峙した直後、特に知的な心理戦を展開するわけでもなく、キャサリンに十字架で両目をメッタ刺しにされて速攻で退場(失明)します。「往年のヒロインを、単なるジャンプスケアの犠牲者として消費した」と、 Friedkin のファンからは大不評を買いました。
① パズズの「元嫁」の登場という悪魔オタクへの言い訳
映画のクレジットを凝視すると分かりますが、本作の敵悪魔は前作の「パズズ(Pazuzu)」ではなく、古代メソポタミア神話における宿敵であり、彼の妻ともされる女悪魔「ラマシュトゥ(Lamashtu)」です。そのため、悪魔がクリス・マクニールを見て「前にも会ったな」と嘲笑うシーンは、オタクたちから「クリスが会ったのはパズズだから考証ミスだ!」と突っ込まれました。しかし神話上、ラマシュトゥの暴走を止める唯一の存在がパズズであるため、この悪魔のチョイス自体は「2人の少女(子供)を狙う、多産の神の対極」というテーマに沿ってはいます。問題は、映画がその神話的背景を活かす前に、ただの「うるさいビックリ箱」になってしまったことですが……。
② ポリコレと「家父長制批判」の唐突な挿入
劇中、クリス・マクニールがヴィクターに向かって「カトリック教会(の男たち)は、私が母親だからという理由で、50年前のリーガンのエクソシズムに立ち会わせず、部屋から閉め出したの。家父長制のせいでね」と語るセリフがあります。これには多くの海外映画ファンが「脚本家は正気か?」と首を傾げました。オリジナル版のカラス神父とメリン神父は、彼女を差別したのではなく、命がけで悪魔の魔の手から母親と娘を守るために殉職したのです。かつての英雄たちを「ポリコレ的視点」で後出しジャンケンで貶める手法は、ググリーン監督が『ハロウィン』でローリー・ストロードのトラウマを拗らせた時と全く同じ悪癖と言えます。
⚠️ WARNING ⚠️
ここから先はネタバレを含みます。
悪魔が大人たちに突きつける「最悪の二者択一」と、2人の少女の明暗を分けた結末を完全ネタバレしています。
5. 【ネタバレ注意】結末と核心の解説
悪魔が仕掛けたソウ(Saw)並みの「生存ゲーム」
物語のクライマックス、自宅の一室に監禁されたアンゲラとキャサリンの周囲に、様々な宗派の大人たちが集結します。カトリック教会のマドックス神父は教会の命令を無視して独断で駆けつけますが、部屋に入る前に悪魔の力によって首を180度へし折られて即死。結局、残されたアマチュアの大人たち(写真家の父、元修道女の看護師、バプテスト派の親、ブードゥーの祈祷師)が、手探りで合同祈祷を開始します。
そこで悪魔ラマシュトゥは、冷酷な条件を提示します。「1人を選べ。選ばれた方は生き残り、選ばれなかった方は地獄へ落ちる。お前たち大人たちの『選択』で少女の運命を決めろ」と。これは、かつてヴィクターがハイチの震災時に「身重の妻と、お腹の子供(アンゲラ)のどちらを救うか」を医師に迫られた、彼の過去のトラウマの凄惨なリフレインでした。
嘘と裏切り:自爆した「親のエゴ」
ヴィクターは、かつて自分が妻ではなくアンゲラの命を選んでしまった罪悪感から、今回は「どちらも選ばない!2人とも救う!」と必死に悪魔のゲームを拒絶します。しかし、隣の部屋でキャサリンの激しい苦悶の表情を見ていたキャサリンの父親が、恐怖とエゴに耐えきれず、叫び声を上げます。「キャサリンを選ぶ!俺の娘を救ってくれ!」
その瞬間、悪魔は邪悪に高笑いしました。悪魔のルールは最初から反転していたのです。「選ばれた方が死に、選ばれなかった方が生き残る」。キャサリンの父親が「自分の娘だけを救いたい」というエゴの選択をした瞬間、悪魔のターゲットは決定しました。選ばれなかったアンゲラの心臓は一度停止しますが、ブードゥーの祈祷と大人の愛によって、悪魔が肉体から剥がれ、奇跡的に息を吹き返します。一方、父親に選ばれたはずのキャサリンは、目や口から汚泥を吐き出しながら、そのままベッドの底(地獄の深淵)へと魂を引きずり込まれ、無残な死を迎えるという最悪の後味の悪いバッドエンドが訪れます。
エピローグ:降臨したオリジナルの奇跡
事件の後、地獄の儀式から生還したアンゲラは学校へ復帰し、ヴィクターとの間には本当の家族の絆が戻ります。しかし、キャサリンの一家は娘を失い、完全に崩壊。そして映画の本当のラスト数秒、病院のベッドで失明し静養しているクリス・マクニールの元に、1人の女性が訪れます。それは、50年間失踪し、母を避けていた本物のリーガン(リンダ・ブレア)でした。
50年ぶりの母娘の無言の抱擁という、ブラムハウスが旧作ファンへの「最大の手打ち」として用意したサプライズカメオ出演のノスタルジーと共に、映画は唐突に終わります。次作『The Exorcist: Deceiver』へと続く新3部作の幕開けですが、この「何でもありの合同祈祷」路線のまま進むのであれば、ホラー界の頂点への返り咲きは程遠いと言わざるを得ません。
6. まとめ・視聴方法
『エクソシスト 信じる者』は、偉大すぎる第1作の影に完全に押し潰された悲劇の続編です。単体の possession 映画として見れば、少女たちの特殊メイクや音響デザインなど、見るべきポイントは多々あります。しかし、『エクソシスト』という看板が背負っていた、人間の深い宗教的葛藤や「静寂がもたらす本物の恐怖」を期待すると、現代的な派手な演出と散漫な脚本に激しい失望を覚えるでしょう。
どこで見れる?(配信状況)
本作は現在、各主要動画配信サービス(Amazon Prime VideoやPeacock、U-NEXTなど)でレンタルおよび見放題配信中です。もし本作を観て「こんなのアベンジャーズだ!本物の、あの息が白くなるようなカトリックの冷たい恐怖が恋しい!」とフラストレーションを溜め込んでしまった方は、ぜひAmazonの検索から1973年のディレクターズ・カット版、あるいは評価の高い『エクソシスト3』を買い直して、悪霊を退散させてください!
※配信状況は執筆時点のものです。
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- 『エクソシスト』(1973年): 言わずと知れたホラー映画の最高峰。本作を観た後は、ウィリアム・フリードキン監督が当時の限られた技術と圧倒的な演出力で作り上げた、人間の魂を削る本物の知的な恐怖を再確認したくなるはずです。
- 『ヴァチカンのエクソシスト』(2023年): 同年に公開され、対照的に大絶賛された実在の神父のエンタメ possession 映画。ラッセル・クロウがスクーターに跨り、力技と確固たるカトリックの信仰で悪魔をドツキ回す姿は、本作の宗教ちゃんこ鍋状態に疲れた脳に最高の爽快感を与えてくれます。
