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「『96時間』の幻影を追うのはもうやめだ。故郷の土を踏みしめるリーアム・ニーソンの、遅すぎた名演」
近年、「家族(または無関係の誰か)を誘拐・殺害され、特殊なスキルを持つ男が復讐の鬼と化して無双する」という、いわゆる“リーアム・ニーソンもの”というジャンルが確立されるほど、同じようなアクションスリラーを量産してきたリーアム・ニーソン。ファンですら「またこのパターンか…」と食傷気味になっていた2023年、彼が久々に“演技派”としての本領を発揮したのが本作『プロフェッショナル(原題:In the Land of Saints and Sinners)』です。
舞台は1974年、IRA(アイルランド共和軍)のテロが吹き荒れる「北アイルランド紛争」時代の荒涼としたアイルランドの田舎町。監督はクリント・イーストウッドの下で『ミスティック・リバー』や『アメリカン・スナイパー』のプロデューサーとして手腕を磨き、リーアムとは『マークスマン』でもタッグを組んだロバート・ロレンツ。監督がアメリカ人でありながら、キャストとクルーをアイルランド人で固めるという強いこだわりを見せています。
海外レビューサイト(IMDb)でのスコアは6.4/10と中程度ですが、レビュー欄には「ここ数年のリーアム映画の中で間違いなく最高傑作」と、いつもの頭を空っぽにして観るポップコーン映画とは違う、重厚なドラマ性への賛辞が並んでいます。もちろん、「アクションが少なくて退屈」「IRAの描き方がステレオタイプすぎる」というシニカルな批判も健在です。
静かな田舎町で交差する、老いた殺し屋と凶悪なテロリスト。果たして誰が聖者(セイント)で、誰が罪人(シナー)なのか。アイルランドの血と泥にまみれたノワール・ウェスタンの全貌を徹底解剖します。
- おすすめ度: ★★★★☆(4.0/5.0)※派手なカーチェイスや無双アクションを期待すると肩透かしを食らいます。重厚で静かな「アイリッシュ・ウェスタン(アイルランド版西部劇)」としてじっくり味わうべき作品です。
- こんな人におすすめ: 『許されざる者』のような、引退した男の悲哀を描いた映画が好きな人。『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョフリー役(ジャック・グリーソン)の久々の勇姿を見たい人。
1. 作品情報とIMDbスコア(世界基準の客観評価)
IMDbスコアは6.4/10。レビューの傾向を見ると、派手なアクションを期待した層からは「ペースが遅すぎる」という不満が漏れる一方、シネフィル層からは「近年乱造されていたリーアム映画とは一線を画す、キャラクター主導の良質なドラマ」として高く評価されています。また、脇を固めるアイルランド俳優陣の圧倒的な存在感も絶賛の的となっています。
| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 邦題 / 原題 | プロフェッショナル / In the Land of Saints & Sinners |
| カテゴリー | 長編映画(アイルランド・米等 / Facing East Entertainment等製作) |
| ジャンル | アクション / 犯罪 / ドラマ / スリラー |
| IMDbスコア | 6.4 / 10 (静かな展開に賛否はあるが、近年最高のリーアム映画と評する声多し) |
| 世界興行収入 | 約362万ドル |
| 監督 | ロバート・ロレンツ |
| 公開年 / 上映時間 | 2023年 / 106分(R指定:暴力、言語) |
主要キャスト・登場人物と本作における役割
本作の最大の魅力は、ハリウッド映画でありながら「本物のアイルランド俳優陣」による極上のアンサンブルが楽しめる点です。
| キャラクター | キャスト (Cast) | 役柄・物語のテーマにおいて果たす役割(深掘り) |
|---|---|---|
| フィンバー・マーフィー (Finbar Murphy) | リーアム・ニーソン (Liam Neeson) | アイルランドの田舎町で静かに暮らす男。その正体は、地元の顔役から金で暗殺を請け負う「殺し屋」です。第二次大戦の退役軍人で妻を亡くしており、庭いじりをして余生を過ごすために殺し屋稼業からの引退を決意しますが、町に現れたIRAのテロリストたちとの衝突により、再び銃を手に取ることになります。 |
| ドイレーン・マッキャン (Doireann McCann) | ケリー・コンドン (Kerry Condon) | ベルファストで子供を巻き込む爆弾テロを起こし、フィンバーの住む町へ逃亡してきたIRAの過激派リーダー。『イニシェリン島の精霊』でアカデミー賞候補になったケリー・コンドンが、目的のためなら手段を選ばない冷酷な悪役を恐ろしいまでのテンションで演じ切っています。 |
| ケビン・リンチ (Kevin Lynch) | ジャック・グリーソン (Jack Gleeson) | フィンバーと同じ元締めの下で働く、若き殺し屋。『ゲーム・オブ・スローンズ』の悪逆非道なジョフリー王役で世界中から憎まれ(そして一時俳優を引退していた)彼が、口ひげを生やした少し生意気だが憎めない青年として見事な復帰を果たしています。 |
| ヴィンセント・オシェア (Vincent O’Shea) | キアラン・ハインズ (Ciarán Hinds) | 地元の警察官であり、フィンバーの良き友人。フィンバーの裏の顔には気づいておらず、共に酒を飲み、射撃を楽しむ仲ですが、テロリストの出現により彼もまた事件の渦中に巻き込まれていきます。 |
| ロバート・マッキュー (Robert McQue) | コルム・ミーニイ (Colm Meaney) | フィンバーやケビンに暗殺の仕事を回す地元の元締め。アイルランドを代表する名バイプレーヤーが、裏社会の掟を重んじるボスを重厚に演じています。 |
2. 『プロフェッショナル』あらすじ(ネタバレなし)
「罪を背負った男が、聖者の顔をして暮らす町。そこに、本物の“悪魔”がやってきた」
1974年。IRA(アイルランド共和軍)による爆弾テロが多発し、血なまぐさい紛争が続く北アイルランド。ベルファストで爆弾テロを実行したIRAの強硬派リーダー、ドイレーン(ケリー・コンドン)とその一味は、手違いで罪のない子供たちを巻き添えにしてしまったため、ほとぼりが冷めるまで辺境の田舎町へと身を隠すことになります。
その田舎町には、第二次大戦の退役軍人フィンバー・マーフィー(リーアム・ニーソン)が暮らしていました。表向きは静かな余生を送る初老の男ですが、彼の裏の顔は、元締め(コルム・ミーニイ)から依頼を受けて地元の「消されるべき悪党」を人知れず始末するプロの殺し屋でした。しかし、長年の殺しに嫌気が差したフィンバーは、庭で野菜を育て、隣人の女性と心を通わせる穏やかな人生を送るため、ついに引退を決意します。
しかし、平和な日常は長くは続きませんでした。町に逃げ込んできたIRAのメンバーの一人が、フィンバーの親しい友人の身内(少女)に虐待を加えていることを知ったのです。警察も手を出せないその悪党に対し、フィンバーは「最後の仕事」として自らの手で裁きを下し、死体を森に埋めてしまいます。
仲間が消えたことに気づいたIRAのリーダー、ドイレーンは激怒し、町中を巻き込んだ血みどろの犯人探しを開始します。引退した老殺し屋と、血に飢えた狂気のテロリスト。アイルランドの荒涼とした大地を舞台に、逃れられない暴力の連鎖が幕を開けます。
3. 海外の評判・レビューと「賛否が分かれる理由」
本作のレビューは、「アクション映画」として観るか、「アイリッシュ・ノワール(西部劇)」として観るかで評価が完全に分かれています。
👍 評価される点:アイルランドの美しき原風景と、豪華俳優陣の“演技”
- リーアム・ニーソンの「演技」が観られる喜び:
近年は「とりあえず銃を構えて敵を撃ち殺すだけ」の役が多かったリーアムですが、本作では「過去の罪に苛まれ、贖罪を求める老いた男の悲哀」を見事に演じており、ファンを感涙させています。 - アイルランド版『許されざる者』としての風格:
雄大でどこか寂しげなドニゴール州の風景と、クリント・イーストウッドを彷彿とさせる「過去から逃れられない男の西部劇」的な演出が、映画に重厚な文学性をもたらしています。
👎 批判・注意点:アクションの少なさと、露悪的なテロリスト描写
- スローペースすぎる展開:
「いつものリーアム無双」を期待した観客からは、「テンポが遅すぎて退屈」「アクションが始まるまでが長すぎる」という不満が漏れています。ドンパチを期待すると肩透かしを食らいます。 - IRAの描き方と時代考証のアラ:
ケリー・コンドン演じるIRAの女性リーダーが、あまりにもステレオタイプな「怒り狂ったサイコパス」として描かれていることに対し、「IRAの政治的背景を無視した安っぽい悪役描写だ」という批判が存在します。また、劇中でフィンバーたちが使用する銃(ベレッタ92FS)が、時代設定の1974年にはまだ存在しない(1988年登場)という、ミリタリーファンからの鋭いツッコミも入っています。
① 「木を植える」殺し屋の贖罪
フィンバーの殺しの手口は独特です。標的を殺害した後、森の中に死体を埋め、その墓標代わりに「苗木(tree)」を植えるのです。森に増えていく木々は、彼が奪ってきた命の数(罪の重さ)であり、同時に「新しい命を育てる」という彼なりの不器用な贖罪の証でもあります。この詩的なメタファーが、本作を単なるB級アクションから一段階引き上げています。
② あの“憎きジョフリー王”の鮮やかなイメージ脱却
海外レビューで最も驚きと喜びをもって語られているのが、若き殺し屋ケビンを演じたジャック・グリーソンの存在です。『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョフリー役であまりにも世界中からヘイトを集めた結果、一時期俳優業から離れていた彼ですが、本作では「カリフォルニアでバンドを組むことを夢見る、ちょっと生意気で心優しい若者」を好演しており、かつての憎まれ役のイメージを見事に払拭しています。
⚠️ WARNING ⚠️
ここから先はネタバレを含みます。
田舎町のパブでの最終決戦と、フィンバーの選んだ結末について暴露しています。
4. 【ネタバレ解説】パブでの決闘と、聖者にはなれなかった男
ケビンの死と、パブでの最終決戦
ドイレーン率いるIRAのテロリストたちは、ついに弟を殺した犯人がフィンバーであることを突き止めます。彼らはフィンバーの雇い主であるマッキューを脅し、さらに若き殺し屋ケビンを捕らえてしまいます。フィンバーはケビンを救おうとしますが、一歩遅く、カリフォルニアでの新しい人生を夢見ていたケビンは無残にも殺害されてしまいます。
親しい者を殺され、町を火の海にされかけたフィンバーは、逃げることをやめ、テロリストたちを町のパブへと誘い込みます。古き良き西部劇の「酒場での決闘」の始まりです。フィンバーは得意のショットガンと、警察官の友人ヴィンセント(彼もまた友人を守るために銃を取ります)の援護を受け、テロリストたちと壮絶な銃撃戦を展開します。
ドイレーンの最期と、罪の清算
激しい銃撃戦の末、フィンバーはテロリストたちを次々と血祭りにあげていきます。最後に残ったドイレーンは、最後まで狂気と憎悪をむき出しにしてフィンバーに立ち向かいますが、彼の手によってついに息の根を止められます。
結末:どこにも行けない罪人たち
町を脅かしていた悪(テロリスト)は排除されましたが、フィンバー自身もまた「人を殺してきた罪人」であることに変わりはありません。親しかった隣人や警察官のヴィンセントに「自分の裏の顔(人殺し)」を知られてしまったフィンバーは、もはやこの町で「聖者(善良な市民)」の顔をして生きていくことはできなくなりました。
彼は、隣人への手紙と愛猫を残し、誰にも看取られることなく静かに町を去っていきます。かつて彼が「本当の自分を見てほしい」と願った穏やかな余生は、自らが引き金にかけた指によって永遠に失われました。暴力でしか解決できない罪人(Sinners)の悲しい宿命を描き、映画は西部劇のような余韻とともに静かに幕を閉じます。
5. まとめ・視聴方法
映画『プロフェッショナル』は、「リーアム・ニーソンがただ悪党をボコボコにする爽快な映画」を求めていると確実に火傷をします。しかし、年老いた俳優の皺に刻まれた人生の重みと、アイルランドの歴史的な痛みを重ね合わせた「上質なドラマ」として観れば、間違いなく近年屈指の傑作です。静かに燃えるアイリッシュ・ノワールをぜひご堪能ください。
どこで見れる?(配信状況)
本作は現在、Amazon Prime Videoなどの各種配信プラットフォームにてレンタル・購入が可能です。※以下のボタンから、Prime Videoでの視聴や、関連するアイルランド映画・リーアム・ニーソンの過去作をチェックすることができます。
※配信状況は執筆時点のものです。料金等はリンク先でご確認ください。
▼ 次に見るべき関連作品
- 『許されざる者』(1992年): クリント・イーストウッド監督・主演。かつて冷酷な悪党だった男が、再び銃を手にする悲哀を描いた西部劇の最高傑作。本作とテーマが完全に一致します。
- 『イニシェリン島の精霊』(2022年): アイルランドの孤島を舞台にした、人間の不条理で悲喜交々を描くドラマ。本作で悪役を演じたケリー・コンドンがアカデミー賞候補になった名作です。
